第69回 NHK杯テレビ将棋トーナメント 稲葉八段 × 里見香奈女流戦
2019年8月18日、NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第1局 稲葉陽八段 × 里見香奈女流五冠戦を観ました( ..)φ
- 対局前インタビュー
- 戦型は居飛車銀冠穴熊vs向かい飛車
- 10年ぶりの対局
- 後手が仕掛ける
- 考慮時間が分からない
- 二人は研究会仲間
- 大きなポイント
- 稲葉八段について
- 勝負どころ
- 先手良し
- 投了図以下
- 本局を振り返って
対局前インタビュー
Q.里見女流五冠の印象はいかがですか?
稲葉八段「10年前に一度公式戦で負かされてるんですけど、それから実績を積み上げられて、第一人者としてほんとに大変な強敵だなあと思っております」
Q.今期NHK杯戦の抱負をお願いします
稲葉「昨年は一局しか指せなかったので、今年は一局でも多く指せる様に頑張りたいと思います」
Q.稲葉八段の印象はいかがですか?
里見女流「はい、トップの棋士でA級に在籍されていますし、ほんとに大変強い先生という印象です」
Q.本局の抱負をお願いします
里見「自分の力を精一杯出し切って、悔いの無いように頑張りたいと思います」
戦型は居飛車銀冠穴熊vs向かい飛車
▲先手 稲葉陽八段
△後手 里見香奈女流五冠
(持ち時間各10分 使い切ると一手30秒未満 ただし秒読みに入ってから1分単位で10回の考慮時間がある)
先手は居飛車、後手は向かい飛車になりました
序盤は速いペースで進み、27手ぐらいまでほぼノータイム
後手は三間飛車に振り直し
先手は銀冠穴熊を目指します
藤田女流「後手はどの様な形を目指して行くんでしょうか?」
千田七段「通常であれば囲い合うんですけど、そうすると先手の玉が非常に堅くなってしまいますので、そうは指さずにもう強く攻めて行くつもりなんだと思います」
後手は8筋から玉頭を狙うとのこと
10年ぶりの対局
藤田「これまで1局対局がありまして、里見女流五冠の1勝となっております。稲葉八段のお話にもありましたように10年ぶりと言う事でしたね」
千田「結果は里見さんの勝ちなんですけれども、負けてる方が今回の対局で気負いなく行けるのか、逆にプレッシャーになってしまうのか」
藤田「里見女流五冠は2回目のNHK杯出場という事で久しぶりになりますね。現在五冠所持していまして男性棋戦でも活躍されてますし常にトップを走っている存在ですね。千田七段も対局されたことがあると言う事ですけど」
千田「奨励会時代に一度。新人王戦という棋戦で、私が奨励会員で里見さんが当時三冠すでに。多分9年とか7年とか前だと思うんですけど、その頃から女流三冠・タイトル複数冠持っていて」
藤田「その時対局されてどんな印象でしたか?」
千田「そうですねーまあ10年前とは言わないものの、かなり前の話になっているので・・対局内容は覚えてるんですけど、どういう心境だったかまでは覚えてないです、なかなか(笑)」
藤田「(笑)」
千田「最初下座に座られてたのが印象に残ってますね。当然ながら上座に座って頂かないといけないんですけど」
・・・
10年前の対局は里見さんは16歳の高校生、稲葉さんは四段でしたね
稲葉さんの自戦記に 「いまは私に勝って驚かれているが、そのうちに勝っても普通と思われるときがくるのではないか。」「今後はもっと活躍していきたい」と書かれていましたけれどその言葉通り今はA級八段。
里見さんも奨励会に入って強くなってNHK杯に戻ってきました
不思議なめぐり合わせですね~
後手が仕掛ける
40手目△8五歩と後手が仕掛けました
後手は持ち時間を使い切り1回目の考慮時間に
48手目△1四歩
千田「(1四歩という手は)普通だったら△1三香と上がって角の利きを逸らすというのが考えられるんですけど、(8筋の歩を成られた時に)香取りになってしまうんですね。1三香が損になる恐れがあってですね。1四歩を活かすのがそう簡単ではないんではないかと言うのが居飛車党の考え方・・まあ振り飛車があまり得意ではない居飛車党の考え方です(笑)」
藤田「(笑)そーなんですね」
千田「ですけど実際指されてみると今稲葉さんも考えられてる様に「うーん」と唸る事も多々あってですね。難しいですね」
藤田「判断が難しいですね」
先手は普通の銀冠穴熊とはちょっと違う形、なのでちょっと薄いそう
考慮時間が分からない
藤田「この対局前に里見女流五冠と話したんですけども、最近まで考慮時間があまり分かっていなかったそうで(笑)」
千田「(笑)」
藤田「妹の女流棋士の咲紀さんに4、5回説明してもらってようやく分かったそうです(笑)」
千田「ほー4、5回」
藤田「少し意外でしたね(笑)前回出た時はあまり分かっていなかったかもしれないですね」
千田「あーそうかもしれないですね。そういう私もあんまり分かってなかった時がありまして」
藤田「(笑)そうなんですか」
千田「ちょっと残りの所がゼロになったらアカンのかなみたいな思ったりしますけど」
藤田「(笑)今回はもうバッチリ分かっているという事で。使い方なども備えて来ていると思います」
二人は研究会仲間
藤田「公式戦では2局目ですが、研究会もされているそうですねこの二人」
千田「直接ですか?あまり棋士室でこの二人が直接やっている所は私はあまり見かけた記憶がないんですけど、そうなんですね」
藤田「やっぱり研究会仲間ですと相手の呼吸とか分かったりするんですか?」
千田「それは非常にやりやすいと思います」
都成五段の研究会に里見さん稲葉さんが参加してましたね
大きなポイント
66手目△5五歩
千田「この5五歩の交換が一手パスになるのかどうかというのが、かなり大きいポイントだと思います。例えば5筋を切った効果として、飛車を捌きやすくなったし歩を垂らす筋も出来たんですけど、歩を垂らしてと金を作ってもあまり先手に響かないかもしれない」
稲葉八段について
藤田「稲葉八段もこのNHK杯戦は準優勝の経験もありますし、名人戦に挑戦したりなど本当に活躍されてる棋士の一人ですよね。対局されてみていかがですか?」
千田「やっぱり終盤悪くなってからの粘りと言いますか、妖しげな指し手と言うべきですかね。棋士室とかでやってる所を見た事があるんですけど、相手が必勝の局面なんですけど、何故か最後は稲葉さん勝ってたりする事が割とあってですね、明らかに飛車得なんだけどなあーみたいな所から引っくり返す、そういう印象はありますね。もちろん順当勝ちも多いんですけど」
勝負どころ
73手目▲3二歩成
千田「ものすごい勝負どころなので、△3二同銀と取った手が敗着となったりする事もあったり、逆に△5七歩と攻め合うのも良くなかったという事もあったりするので」
83手目▲3五角
千田「こうやって手を渡されると後手もかなり上手い手を返すのは難しいですね。9七銀は悪形ですけど後手から上手く攻められなければ、絶対に詰まない形を保ちやすい陣形ではあるので」
84手目△3四歩
千田「おおっと。強気ですね」
歩を打ってもらったので先手が得とのこと
86手目△2一飛車
千田「▲4二角成と▲5五歩と2つの筋があるんで、ちょっとこのあたり後手がけっこう損になってる様な気がします」
先手良し
91手目▲2八飛車
千田「なるほどこういうのが冷静なんですね」
藤田「成らないんですね」
千田「確かにこれ5八のと金を掃えると相当安全になりますので」
藤田「攻め合いではなく受けて」
千田「こういう所でちょっとずつ押して行くというのが理想的な指し方ですね。里見さんも攻めあぐねだすと辛い展開になりやすいので。まだ後手陣も7五角がいますので。まだここでダッシュをかけられたりとか激しい攻めを繰り出しやすい陣形ではあります」
96手目△5七馬
現局面は先手がけっこう良さそうで、銀をタダで取れるのが大きいとのこと。
後手は考慮時間を使い切り30秒将棋に
114手目△8一桂馬
千田「これは執念の粘りですね。勝率の高い人の手と言う感じがしますね。本当はさっと行って負けるんならいくらでもあるんですけど、そういう手を指さずに相手のミスとかも待って。そうやると相手も慌てて間違えてくれたりする事もあったりするというのが分かってる様な指し方ですね」
藤田「このあたりは勝負術ですね」
千田「そうですね」
115手目▲2二飛車成
千田「これがたぶん詰めろです。▲7六馬と取られても先手玉は詰まないので。△7九銀と引っかけて詰ましてくださいと後手は言うかなあと」
118手目△7九銀
藤田「この手が詰めろなんですね」
千田「この手がやりたかった為に受け続けたという事ですね」
123手目▲6三飛車
ここで後手が投了。123手まで稲葉八段の勝ち
投了図以下
一例として
△6三同銀▲同と金△同玉▲3三龍△7二玉▲7三金△8一玉▲8二銀△9二玉▲8三金まで
本局を振り返って
千田「序中盤、里見さんが若干先手の陣形を崩してポイントを得たと思ったんですけど、そのあと9七銀と悪形にしたけれども、その形を上手く崩せなかったと言う所ですかね。そのあたり稲葉さんの指し方が巧みだったという所でしょう」
里見さんがっくりしてましたね
中盤まで良い勝負に見えました
途中から稲葉八段がどんどん良くなって、逆転も難しいらしく
先手の快勝だったでしょうか?稲葉八段は強かったですね~
里見さんは落ち込んでましたけど
感想戦をやっているうちに笑顔も見れました😊
またNHK杯で里見さんの対局を観れますように~🍀
本局の詳しい解説は将棋講座テキスト10月号に掲載されるそうです
棋譜↓